私はとある税理士事務所に勤務していますが、私はかなりの「TKCアンチ」です。
業界大手と言われるTKCですが、現場で使っている身としては「なぜここまで使いにくいのか」「なぜこんな仕様で許されるのか」と、日々怒りを感じています。
単なるシステムへの不満だけではありません。TKCを取り巻く独特の文化に対しても、多くの疑問を抱いています。
今回は、私が抱えている不満を、システムを提供する「会計事務所」の視点と、実際に使わされる「顧問先(利用会社)」の視点に分けて、書き残します。
【視点1】会計事務所側の地獄(ベンダーの下請けにされる我々)
我々会計事務所職員は、TKCという巨大なシステムと、現場の板挟みに遭っています。業務効率化どころか、TKCを使うことで「余計な仕事」が増えているのが現実です。
1. 「一気通貫」は大嘘である
TKCはやたらと「一気通貫」という言葉を使いますが、実態は全く違います。システムがバラバラに独立しており、連携などしていません。
- データ伝送の儀式(前時代的)
他社のシステムなら、月次処理の延長線上に決算や申告書の作成プロセスがあります。しかし、TKCは違います。
まずデータセンターにデータを「伝送」し、別途「TPS1000」などの決算申告システムを立ち上げ、そこでまたデータを受信する……。この「行ったり来たり」の工程が本当に面倒くさい。なぜシームレスに繋がらないのでしょうか。 - 見せかけの統合
最近「会計・給与・販売管理が一緒になった」と大々的に謳っていますが、あれは単に「一つの画面の中にアイコンが収まっているだけ」です。中身は全く連携しておらず、別々のソフトが同居しているに過ぎません。 - 設定の「たらい回し」地獄
例えば給与の設定中、完了ボタンを押すと「違う画面でこの処理を行っていないため、ここでは完了できません」というエラーが出ます。
「じゃあ、どこでやればいいの?」という案内がほとんどありません。その処理のためにまた別の設定画面を探し、あっちへ行ったりこっちへ行ったり……無限にたらい回しにされます。
2. マニュアル不在と「会計ベンダー化」させられる事務所
TKCのビジネスモデルで最も嫌いなのが、「TKC・会計事務所・顧問先」という歪な三者関係です。
- マニュアルが存在しない
信じられないかもしれませんが、客先用の操作マニュアルがありません。会計事務所が会社に合ったマニュアル等を作り、勘定科目等の設計し、その会社向けにカスタマイズするという前提で構築されており、会計事務所が工数や作業時間に応じた「立ち上げ支援料」を自由に設定し、請求できるということなのですが、めんどくさいので、マニュアル用意してほしいし、設定もTKCの連中がやれや!って思います。私は時間がとられるだけなので、支援料などいりません。むしろ請求して「何でこんなに高いの?」と会社の社長に言われることが多々あります。
担当のSCG(TKC社員)に「絶対に誰も見ないであろう分厚いマニュアルはありますが、お客さんが参照できる簡易なマニュアルはないんですか?」と聞いても、「ないんです」の一言。いや、「ないんです」じゃないんだよ笑。マニュアルはあれよ!あと、AIで作った解説動画も見てて腹立ちます。クラウド版は比較的簡易なものがあるにはあるみたいですが、一般的すぎて、個々の会社に当てはまる共通の説明書はないパターンが多いですので、結局、会計事務所が自作することになります。なぜ高いシステム料を払って、我々がマニュアルを作らなければならないのでしょうか。 - 「会計ソフト屋」のような雑務
記帳代行ならまだしも、ソフトの細かな設定や使い方の指導まで我々に丸投げされます。我々は税務のプロであって、システムベンダーのサポートセンターではありません。なんとかサポートとか言うヘッドセットで会社側がTKC側に直接聞けるシステムあるみたいですが、返答が来るのが遅い。そういえば、TKCのヘルプデスクに会計事務所側からもシステムについて質問できるのですが、電話でしか対応してくれない。一時期メールで質問が出来たときもありましたが、今は全て電話です。必ず担当者から折り返しになり、返答も遅い。システムが少しでも違うことを質問すると、私は給与システム専門なので、〇〇システム担当からまたご連絡します、みたいなことを言ってきて非常に煩わしい。クラウドシステムで同じ画面にある会計システムのことを聞こうしても少しでも領域が違うと全然答えてくれない。一気通貫しとけや。 - 価格決定の責任転嫁
TKCソフトはレンタル方式ですが、その価格決定権は会計事務所に持たされています。TKCへの支払原価(事務所負担)が高いのに、客先から「高い」と言われた際、TKCではなく我々が矢面に立たされ、説明に苦慮します。請求業務も会計事務所を経由させるため、未収トラブルの元になります。ベンダーが直接請求してくれれば済む話です。
3. 法改正対応への不信感と「消費税減税」への恐怖
選挙などで「消費税0%」などの減税案が議論されていますが、もし実現したらTKCは絶対にトラブルを起こします。断言します。
前回のインボイス制度導入時も酷いものでした。
法令に準拠していないもの(複数の書類を組み合わせてもインボイスとして成立するのにそのことを理解していない)や、逆に「表向き法律に準拠しすぎているせいで使い物にならない」という事態が発生し、現場は大混乱しました。法改正のたびに「また無駄なトラブルが起こるのではないか」という恐怖がつきまといます。
税制改正は関係なかったかもしれませんが、クラウドシステムは昔、一定時間全く使えなくなるという致命的なトラブルも起こしたこともあります。
4. 【重要】研修制度と「巡回監査士」の闇、税理士試験への持論
会計事務所側のTKCのメリットはほぼありませんが、唯一あるとすれば「研修制度」と「情報のデータベース」です。しかし、そこにも大きな闇があります。
唯一のメリット:情報と研修
- TKCローライブラリー: 判例研究をする際、TKCのデータベースは役立ちます。これと、税制改正の研修やその他の研修(実務上のポイントや裁判例の研究)については、質が高く勉強になります。
- 横の繋がり: 税理士同士の横のつながりができる点も、数少ないメリットでしょう。
- あと、TPS1000や2000の税務申告システムは意外にも評価が高く、会計事務所に入社したばかり人や、税務や税法を何も知らない素人でもそれなりの申告書を作成できるという点では評価できるかもしれません。ただ、入力した文字がどこに反映されるのかが明白でないですが。
無駄な研修:システム研修
一方で、「TKCシステムをうまく使いこなそう」といった類の研修。これは完全な時間の無駄です。「TKCじゃなければもっと便利なのに……」という虚無感を感じるだけで、参加するのが苦痛でしかありません。
謎資格「巡回監査士」への違和感
多くのTKC会員事務所では、新人職員に対して「巡回監査士」という資格を取らせることを目標にさせます。
税理士試験はハードルが高いため、まずはここから……という意図は分かりますが、個人的には「何の意味もない資格」だと思っています。
- 丸暗記の無意味さ: 問題集の問題がそのまま試験に出ます。下手したら数字まで同じ問題が出ます。理解していなくても、答えを暗記すれば合格点が取れてしまう。そんな試験に何の実務的価値があるのでしょうか。
- 上からの強制: 若手職員が上からの指示で仕方なくこの勉強をしている姿を見ると、歯痒い気持ちになります。
あとテキストと問題集が販売開始されるのが遅い。ただ、税理士試験を勉強している人は勉強科目が同じであれば余裕で100点でクリアできる難易度です。税法だけじゃなく、TKC独自の科目もあって、これが非常に苦痛。巡回監査士の科目が何科目あったか忘れましたが(確か税法は法人・所得・消費・相続だったかな?)、全部トータルして合計しても税理士試験の1科目の難易度・必要勉強時間には到底及びません。
税理士試験を勉強しないことへの疑問
ここからは私の個人的な持論ですが、給与の低い税理士事務所で働いているのに、税理士試験の勉強をしていない人は「何のためにいるの?」と思ってしまいます。
もちろん、シングル家庭や子育て中で物理的に時間が取れないといった事情がある方は別です(ただ、時間がとれない中でも勉強時間を捻出し、合格されてきた人もいっぱいいます。本当に、どうやって勉強時間を確保しているのかが謎ですが)。しかし、そうでない職員(特に若手)が、謎の「巡回監査士」の勉強や、TKCシステムの習熟に時間を費やしているのを見るのが耐えられません。
- 講師ですら認める事実: 私の友人も、なんならTKCの巡回監査士研修の講師ですら(大きな声では言えないと前置きしつつ)「こんな勉強するくらいなら、税理士試験の勉強をした方が100倍いい」と言っていました。
- 若いうちにやるべき: 30代後半になれば記憶力は落ちてきます。若い貴重な時間を、TKC独自の資格に捧げるのではなく、普遍的な国家資格である「税理士試験」に充てるべきです。
- 事務所を辞めるべき: もし勉強ができない、しないのであれば、給料も安い税理士事務所で働く意味はありません。さっさと辞めて他へ行った方がいい。工夫して勉強時間を捻出し、受験するのがこの業界で働く者の定めだと私は思っています。でも大手にお勤めなら全然無資格でもいいのかもしれません。
あと、60代からでも税理士を目指し、税理士になった人もいます。年齢を重ねると、50代になると諦めムードの職員の方々はたくさんいらっしゃいますが、何歳からでも挑戦する方がいいと思います。税法免除の大学院にも50代の方はたくさんいます。話がそれてしまいましたね。
【視点2】利用顧問先・会社側の悲劇(高くて使いにくいシステム)
では、高いレンタル料を払わされるユーザー(顧問先企業)にとってはどうなのか。こちらも「使いにくさ」のオンパレードです。顧問先企業にとってはTKCシステムを使うメリットは一つもありません。あと、基本的にTKC会員の税理士は顧問料が高いですが、TKC側に払う料金が高いということもその理由の一つです。
1. 会計ソフト(クラウド)の仕様欠陥
- 遡及処理ができない: 過去の入力ミスに気づいても、遡及訂正が基本的にできません。これが実務上、一番のネックです。訂正仕訳は逆仕訳をすることになります。訂正仕訳を訂正する際などは非常に煩わしく、元帳がぐちゃぐちゃになります。TKCは、会社によっては、いつでも遡及訂正できるように設定変更を可能すべきです(その権限は会計事務所が有することになると思いますが)。
- 月次更新の呪縛: 会計事務所側で「月次更新」ボタンを押さないと、4か月以降の翌月の入力作業ができません。設定で回避することもできず、ガチガチに固められていて柔軟性が皆無です。
元帳摘要が修正しにくいし、デフォルトの設定で科目別で使える課税区分が限られてて非常に憤りを覚えるし、使っていると非常に腹が立ってくると思います。なんの嫌がらせなのでしょうか。
あと、やむを得ずTKCのウェブブラウザを用いたクラウドソフトを利用しなければならない場合は、以前紹介したGoogleの拡張機能Vimiumを利用した方がいいです。
2. 給与ソフト(クラウド)の改悪
- データ移行不可(手入力の刑): こちらは会計事務所側の仕事なのかもしれませんが、従来のオンプレ版(TPS9100等)からクラウドへ移行する際、設定データが一切引き継げません。全て手入力が必要です。人の手で一から打ち直すなんて、DXの時代にありえません。
- 年末調整の帳票が劣化: 以前のように「還付金明細」を源泉徴収票と一緒に出せなくなりました。別途還付でない場合、給与明細に載せるしかなく、一覧表を出しても「合計が出ない」「見づらい」という弊害だらけ。会計事務所側のシステムでは出せますが、会社が運用するクラウド単体では機能不全です。
- 更新すると過去のデータが直せないのは会計と同じです。給与明細も様式が気持ち悪いし、カスタムも非常にめんどくさいです。あと社員削除もできないし、使いにくいところを挙げるとキリがないです。
3. 販売管理システムの致命的な欠陥
請求書発行などを行う販売管理ソフトに関しては、中小企業に勧めるのが憚られるレベルです。クラウド版に全部移行するようで、そのうち、従来のスタンドアロン版が利用できなくなるようです。
- UIの激変: 従来のスタンドアローン版(SX2)を使っていた企業がクラウドに移行しようとすると、FXシリーズの販売管理はUI(画面デザイン)が全く異なり、現場が混乱します。しかも非常に使いにくく、TKCの社員や先生方も苦言を呈している人が多いです。また、納品書や、請求書の様式のカスタマイズが非常にややこしく、パソコン操作が苦手な人にはできません。入力の制限も多すぎて何故こんなソフトを作ったのか理解に苦しみます。
- 上位版「SX4クラウド」の壁: FXクラウドシリーズの販売管理は使い物にならないため、少しでもまともなものを使おうとして上位版の「SX4クラウド」を検討すると、利用料だけで最低月5万円を超えます。大企業ならまだしも、部門別管理も必要ない数名の会社に導入するのは非現実的です。
結果、「使える販売管理ソフトがない」というのが結論です。FXまいスタークラウドは、販売管理機能がついていると言いますが、「売上・請求」しか入力できず、「仕入情報」が入力できない気がする。全てがクラウドに移行するまで時間の問題です。現在TKCの販売管理ソフト利用している会社は他社システムに変更する準備を始めた方がいいでしょう。
4. スマホアプリについて
DX化の切り札のように言われてた証憑保存アプリですが、これも酷い出来です。例えば、「スマホで経費」とかいうアプリ。「スマホで経費」とか言ってる割にはスマホだけで経費を分類・計上してくれるわけではなく、ただ単にレシートとかをクラウドにアップロードするだけの機能です。何の意味もないです。「スマホで経費」じゃなくて、「スマホで撮影」です(ただのカメラじゃん)。
- カメラ機能がポンコツ: 撮影しようとするとデフォルトのトリミング機能が邪魔をします。フォーカスが「ビヨンビヨン」と定まらず、撮れた写真は斜めになったり、90度回転していまいます。ありえないほど不便です。普通にカメラで撮った方がいいです。
- 別アプリ・別ログイン: 「証憑保存機能」を使うには、また別のシステムを立ち上げ、ID・パスワードを入れ直す必要があります。ここでも一気通貫していません。
- OCR精度が低い: スキャンしても金額や取引先名の読み取り精度が低すぎて、使い物になりません。結局手で直す羽目になります。有料オプションに入れば精度が上がるという噂もありますが、TKC社員に聞いても「本当によくなるか」的を射た答えが返ってきません。あと、容量が増えてくると課金されます。
- 勝手な枠線: デフォルトで「証憑番号」という枠が入る設定になっており、鬱陶しいことこの上ない。設定解除の方法も分かりにくすぎます。
最近流行りのスマホだけで経費の計上などができるアプリを利用したいと思う人も多いと思います。個人事業主の方から「そういう機能があったら使いたい」と相談されましたが、TKCにそんなものはありません。後追いで作ってくる可能性もありますが、TKCシステムの理念や他のソフトとの兼ね合いを考えると、やはり活用はしにくいものとなるでしょう。
スマホでできるのは、証憑保存や、業績を確認することくらいです。業績を確認するのは「月次決算速報サービス」だったかな?とかいう機能で、「月次決算」と謳っておきながら、月別の売上データなどが見れません。単なる累計あるいは推移としての経営(分析)指標だけです。意味がありません。顧問先の社長が不満をもらしていました。
5. AIとの相性も最悪
最後に、TKCのシステムはAIとの親和性が低く、他社ソフトとの互換性もほとんどありません。これはわざと連携しにくくしているのでしょうが、本当にいいところが一つもない。
唯一使えるのは、前述した判例検索の「TKCローライブラリー」くらいでしょうか。でも、肝心の会計ソフトがこれでは……。会計ベンダー業を辞めて、租税研究会に成り代わった方がいいのでは。
結論
TKCには、理念が宗教じみていて気持ち悪いという側面もありますが、それ以上に「システムとしての完成度」と「ユーザーへの配慮」が決定的に欠如しています。
会計事務所には「下請け業務」を強要し、顧問先には「高額で不完全なソフト」を押し付ける。
それでも我々が使い続けなければならない現状に、今日もまたストレスが溜まっていくのです。


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