今回は中小企業の社長が亡くなってしまった際に保険金を受け取った場合、思わぬ法人税の支払いに狼狽しないよう注意点を書いていきます。個人でも生命保険に加入することは大事ですが、経営者ならば会社を守るために最低限の保証も必要です。一般的には社長が被保険者となることが多いですが、社長が働けなくなった時のために不可欠な資金ですので、まだ何も入っていないという方、保険金が足りていなさそうだと感じている方は是非保険契約について検討を行うべきです。
まず初めに会社で加入する必要最低限の保険について軽く解説し、次に保険金に対する法人税について見ていきたいと思います。
法人の生命保険は最低限いくら入れば良いのか
最低限の必要資金のためにいくらの保険契約に加入すべきかですが、下記を目安にして見てください。
あくまで目安ですが今一度見直しを!
借入金対策
金融機関などからの借入金の残高をもとに考えましょう。死亡した場合などは家族が後継者となる場合も多いと思いますが、その方達の負担とならないよう、借金はできる限り減らしてバトンタッチしたいと考える中小企業の社長も多いです。
運転資金対策
社長が不在の際にも会社の支払い先に対する債務は急になくなるわけではなく、売上がないのに買掛金や従業員への給料、社会保険料などを支払わなくてはなりません。その時の運転資金としての対策です。
運転資金・・・(売掛金+在庫− 買掛債務)×必要月数
必要月数は会社の想定される状況により異なりますが、6ヶ月くらいとすると安心できます。
また、毎月の固定費×必要月数を運転資金と考えでもいいと思います。
上記は目安で、中小企業の社長が必要最低限の資金を確保するために必要と思われる金額を示したものです。実際にはもっと多くの財務分析なり個別具体的な事情を勘案して算出した方がいいのは間違いなく、保険金額も上がるでしょうが、保険料などをできるだけ抑えたいという会社や保険嫌いの社長のための参考金額です。
この他にも退職金の支払い、納税資金の確保なども考慮の余地はあります。
法人税の税金対策及び注意点
法人契約の死亡保険金は益金参入
社長が亡くなってしまった時のための運転資金の確保として、会社名義で死亡保険を契約している法人は多いと思いますが、受け取る際には、会社の収入になるため、法人税の課税対象となります。いくつも法人契約している場合は社長不在の損失を補って余りある収入となってしまうため、法人の課税所得の思いもよらぬ増加になってしまいます。また、借入金や未払金の債務の支払いに充てる場合も多いと思いますが、そういった支払いは損金(経費)として利益からは控除することが出来ないため、法人税の増加にもつながりやすいです。
保険に加入するときには納税準備金として税金の支払いに備えて保険金を設定するケースも多いと思いますが、毎年保険の見直しをしていない場合ですと思わぬ税金が課せられてしまう場合もあり注意が必要です。
保険金は役員死亡退職金にあてよう(法人税の節税)
そのような法人税の増加にならない手段の一つとして、事後的に対策できるのが、役員の死亡退職金です。保険金の全額と相殺できるケースもあるため、保険金額を確認しながら、退職金を決めて遺族に支給しましょう。
役員の死亡退職金の計算方法
最終の役員報酬×在籍年数×功績倍率(一般的には3倍までにするのが無難)
上記に加え、創業者や、特別の功績があった役員などには功労加算金・弔慰金を加味することも可能です。
功労加算金の限度額・・・役員退職慰労金×0〜30%
弔慰金の限度額・・・報酬月額×6ヶ月分(業務上死亡の場合は36ヶ月分)
相場は1000万から2000万ですが、上記の計算に当てはめて支払いするのが良いと思われます。ただ、相続税がかかってしまう場合もあるため注意も必要です。
死亡退職金の非課税限度額・・・500万円×法定相続人
保険金がいくらになるか、保険会社の証券を見ながら、退職金をいくらにするか考えて法人税がかからないようにしましょう。
団信も生命保険金と同じく扱われる点に注意!
法人契約の保険がいくら払われて、いくら益金計上になるのかを確認して、法人税がいくらくらい増えそうかを対策をするのが一般的ですが、見落としがちなのが、いわば借金が「帳消し」になる団体生命保険、通称「団信」です。この団信も法人税の益金対象のなります・
団信は住宅ローンなどでは加入するのが定石ですが、日本政策金融公庫などから事業用資金の借入を行う際にも加入することも少なくありません。この団信は借入金が0になるというものですので、一旦通帳に借入金残高が入金されて、それを自ら借入先に振込するというものではありません。会社にお金が入るわけではないので、受け取る予定の保険金または受け取った保険金の精査をするときに見落としがちになってしまうのです。実質的には保険金としてお金が会社に入金され、それを原資に借入金を返済したことと同じですので、益金計上の対象になるのは理解しやすいと思います。
まとめ
以上、生命保険と法人税について書いてみました。特に団信は加入していることを忘れたり収入になることを失念しがちですので注意です。
また会社の経営者保証の生命保険契約と一口に行っても死亡保険の他にも医療保険、がん保険などもあります。現在は医療が発展により、重大疾病に罹患してもすぐに死亡せずに、医師からがんの診断を受けて仕事は一時的に休職しても元気に過ごしている人もいます。そうなると死亡保険はもらえないため、死亡以外のあらゆる保証に備えることも重要になってきます。
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