【消費税法】令和6年度税理士試験 感想・考察【大原VS TAC】

インボイス

2024年8月6日、満を持して、先日消費税法の税理士試験を受けてきました。

あんまり試験のことは思い出したくないので問題用紙を見ずに感想を書いていきますが笑、理論はベタ書きはあんまり出ず、事例問題がほとんどであり、計算については例によって2問体制(30点、20点)でした。

さすがインボイス制度導入後の初となる試験であり、適格請求書・適格請求書発行事業者に関連する問題が多く出題されていました。

インボイス以外の直近の改正事項は特段出題なし

改正項目であった、金地金等の仕入れ等を行った場合の納税義務関係と輸出物品販売場関連の問題、輸出物品販売場における免税が適用された物品と知りながら行った課税仕入れの税額控除の制限などは出題されませんでした。どちらかは出題されると見込んでいたので厚めに勉強していたので出ないんかーい!と思いました。

・金地金等の仕入れ等の200万円の計算には棚調の適用を受けるものを含む

・課税期間が1年未満の場合には年換算する

・理論を書く際に「合計額」と書くことを忘れない

・輸出物品販売場における免税対象物品には金地金と事業用のものは含まれない

などなど、TACの全国公開模試に出題されたことを軸に、輸出物品販売場の許可区分や手続(「臨時販売場を設置しようとする事業者に係る承認申請書」、「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」などの少しニッチな手続書類についてもある程度抑えた)やお客さんところに届いていた輸出物品販売場についてのリーフレット(不正な免税110番~STOP!免税店制度の不正利用~輸出物品販売場制度について)ももらってファイルに閉じてたまに読んでたりしましたが全く意味がありませんでした笑。今年は出ると思ったんだけどな。

インボイス前と変わったところなど

納税義務判定なし

適格請求書発行事業者は問答無用で消費税の課税事業者となるため、納税義務の判定が無くなったのかな。令和5年度の試験でもなかったですね。インボイス登録事業者の納税義務判定にあたっては基準期間1000万円の判定の後に適格請求書発行事業者であるかの判定を行います。

ただ、2割特例が適用できるかの判定を行わなければならないため、実質的には今まで通り納税義務の免除の特例の判定を行わなければならず、今回の試験でいうと特定新規設立法人の納税義務の免除の特例により問1では2割特例が不可という判定をしなければなりませんでした。しかも解散法人という少し難しい論点があったため私は飛ばしてしまったのですが、意外とこれちゃんとやってる人多いっぽいんだよなぁ。

2割特例は3年限定なのでそれ以後の試験はどんな感じになるのかな。めんどくさい納税義務判定がなくなると良いのだけれど。

前提文が2問とも共通

前提文が問1と問2の共通のものとなっており、その部分が罫線で囲われておりました。これには少し面食らいましたが、意外とまとめて判断材料として使えるので楽かな。

あと前提分が積上げか割戻しのところで条文番号しか書いてなかったらどうしようと思っていたのですが杞憂でした。それどころかなんだか予備校の答練の前提文とよく似てて、試験委員の人予備校の問題文参考にしてるのかな?とか思ったほど。

どっちも割戻しかーい

んで結局どちらも割戻しによる計算方法なんかーいとツッコミを入れたくなりました。売上げ、仕入れどちらも割戻し計算。2問ともです。帳簿積上げ計算や、請求書積上げ計算の練習をしていたのにそこは今ままで通り変わらんのかい!という。

オーソドックスなのは仕入れにおいては請求書積上げ計算かな?と思っていましたが、実務的には割戻し計算の方が定石っぽいのでそれに即して出題されたんかいな。どちらにせよ考慮するべきポイントがあるのでうざったい。消費税法の試験どんどんめんどくさいことになっていくなぁ。

適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れ(80%控除の計算方法)

仕入れ積上げ仕入れ割戻し
課税仕入れの都度算出
△△△×7.8/110×80%+△△△×7.8/110×80%・・・=
支払対価の額の合計額を基礎として算出
(〇〇〇+〇〇〇+〇〇〇)×7.8/110×80%=
80%後の数字は切捨て又は四捨五入80%後の数字は切捨てのみ
一応この論点は試験前に軽く確認しておいたので迷うことはなかったのよかった

こんなのいちいち考慮しないといけないのかなりめんどくさいですよね。今回の試験だと割戻しだったので80%の金額をまとめた後に7.8/110×80%と計算することを知らない人も多そう。練習問題でもあまり出題されていないかもしれないし。このへんのことは前提文をしっかり読んで四捨五入にするか切捨てにするかも注意深くチェックしなければ。特に。

TACより大原の方が有利・・・?

媒介者交付特例について

理論問題で、「媒介者交付特例」が出題されました。大原で勉強していれば、「9-3適格請求書発行事業者の義務等」の[7]にがっつり記載されておりましたので普通に真面目に勉強していればとれたところでした。講義でもそこそこ時間を割いて説明がなされました。私は自作の理論暗記ラップで好きな曲だったためかなり早い段階で暗記できていましたのでベタ書きは出来ましたが事例問題だったため設例の会社に当てはめて説明するのを失念してました汗。勿体無い。

さて、この媒介者交付特例ですが、なんとTACでは捨て項目として、授業ではやらないどころか、該当ページには×印を付けて、やらない様に講師から説明があった人が多いそうです。余裕があれば見といてね〜くらいの感じでしょうか。あまつさえ、理論マスターにも載っていなかったようです(理論ドクターには記載があったらしいですが)。

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このことは大原生にとっては大きなアドバンテージとなったことでしょう。でも何でTACは媒介者交付特例を捨て論点であると判断したのかかなり疑問です。インボイス制度下において、実務上も重要な論点であると同時に、試験でも出そうだな、と思っていた論点でした。

また、以前には総額表示義務が理論問題に出た年があったのですが、こちらについても大原の理論テキストには記載がありましたが、TACでは習っていないという人が多かったという印象です。ただ、総額表示についても理論ドクターには記載がありました。そういえばコメリに行くと「当店の商品の表示価格は全て税込価格となっており、非常にわかりやすい表示となっております」みたいなアナウンスが定期的に流れてくるけど、義務だから割と当たり前のことだよな、と毎回思う。

以上のことから、理論については大原生が有利だったという意見がありました。ただ、過年度の計算問題の簡易課税かつ複数税率の解き方については大原方式でやると無茶苦茶時間がかかるという問題がありました(現在は大原もTACと同じやり方に変わっています)ので、諸手を挙げて大原有利とは言えないとは思います。でも大原の理論よりTACの理論の方が小難しく書いてあって覚えにくいんだよなぁ。

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計算はTAC生が有利・・・?

一方、今年の試験については計算においてはTACの方が有利だったのではという声もあります。計算問題の2問目、2割特例か原則課税か、どちらかが有利かを判定する必要があったのですが、その判定をさせる点で類似した問題がTACのファイナルチェックで出題されていたからです。一応大原の全統でも簡易課税と2割特例の有利判定を問われる問題が出題されましたが、簡易のため、事業区分的に第1種でないと簡易の方が有利にならないため簡単に判定できる問題だったこともあり、有利判定に対する意識は大原の全統では養われなかったかもしれません。

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大原とTAC、どちらもいいですがTACのファイナルチェックは大原生もやっておいて損はないかもしれないですね。簡単だし。私は大原生ですがファイナルチェックと重要理論確認ゼミは受講しました。あとメルカリで直前予想答練をゲットして解きました(結構難しかった)。

ということで理論に関しては大原の教材に載っていなくてTACの教材に載っているものもあると思いますので、どっちもチェックしておいた方がいいかもしれません。

  • 理サブ・理マスを見て片方のテキストにしか載っていないものをチェックして暗記・理解する
  • メルカリで他校の直前予想答練をゲットする
  • TACのファイナルチェック、重要理論確認ゼミを受講

万全を期すにはこれらの対策が必要になってくるかもしれません。ただ私は大原で受講しているのですが、TACの解答解説は本当に丁寧に書いてくれています(解答への道)。一方、大原の答練の解答冊子の解説は講義では解説されるので全然詳しくない(全統模試や外販問題集除く)。

あと本試験の解答速報は大原はどこの数字を持ってきてるのかわからなくて非常に不便。ましてやいつもの仮計表もない。まあ仮計表あってもそれすらわかりにくいけど。TACは数字の上に項目が書いてあるのでわかりやすい。

そしていつもTACの方で採点した時に点数が大原よりも上で、ボーダーも超えやすいんだよなぁ。

実務者有利か?

今回の試験で改めて思ったのが、大原かTACかとか関係なく、実務をやっている人は有利だなということ。特に消費税は身近な税目でもあり、税理士事務所でも取り扱う比重の重さは他の税目と比べても圧倒的で、個人事業者でも中小法人でもほぼ関わることになります。またインボイス制度導入後は免税事業者だった小規模事業者に対する諸問題にもそれなりの時間をかけて対処しなければならない場面が増えてきました。

特に今回の試験で言うと、中間申告の還付が不可なことは常識的に考えたらわかるし実務でそんなん聞いたことねーわって感じで当てることが出来ました。ただ、理由に関しては何書けば良いかわかりませんでしたが・・・。事例問題はほぼ全て通達からの引用だったそうな。

2割特例・原則どちらが有利かの判定については、受験生の中には判定せず2割特例でやってしまった人も多いようで、ネットスクールの動画でも「去年2割特例だったから当期も2割特例でやる」と講師の方が言ってみえました。実務では当然の様に判定が必要なので私は判定しました。そしたら時間がなくなってしまいました(めでたしめでたし。)

次回以降の試験では(とは言っても2割特例は3年間だけ(個人は令和8年分まで)ですが)簡易課税と有利判定させて第1種以外の事業もあったりしてそれで有利判定させてくるかもしれません。めんど。

実務で、小売のお客さんで2割特例と原則、どちらが有利か判定した時に原則の方が有利になり、また全額控除であり、まさに今回の試験の様なパターンだったので、問題を解いている最中その会社の社長の顔が浮かびました。

また、媒介者交付特例は実務においても重要であるし、マンション管理組合に対する支払いも私は実務で調べたことがあったので迷いなく出来ました。当方負担分振込料についても売上返還として処理することと適用税率についても同様に社内チェックの際気をつけているので問題なく出来ました。

ただ、平成6年のトラックのリースについてはそんなことあり得ないだろうって感じでマジで意味不明でした。平成6年のトラック乗っている人なんてほとんどいないし車検通してるだけっぽいし何万キロ走ってんだよって感じだしそんなリース契約ありえるか?って感じだし税率3%?とか考えてしまい、これ誤植じゃね?とか思い、計上しませんでしたがこれは間違ってました。

あと問2で、父親に店舗かなんかの家賃を払っているのですが、実務において法人が役員に家賃を払う場合その役員が適格請求書発行事業者でないことが多く、また大原の外販の問題集で役員に対して払った車の使用料が特に「適格請求書発行事業者に該当しない」みたいな指示がなく80%控除になっていたので、今回の本試験でも個人事業者ではありますが80%控除にしてしまった。でも模範解答だと80%控除じゃないんだよなぁ。まあ勝手に推測で父親が適格請求書発行事業者じゃないってことにしたら駄目だけどさぁ。

まとめ

正直私は媒介者交付特例書けたけどベタ書きしただけで事例に当てはめてないし、2割か原則どちらか有利かの判定したけど原則の方の計上が間違っていたりして全然点数がとれず、計算に至ってはアドバンテージどころか間違っているので2割特例だけやっといた方が時間のロスにならなかったのでは?って感じでTACではボーダー超えましたが大原ではボーダー超えませんでした。

少し悔しい部分もありますが、前回申し込み忘れで試験を受けられず忸怩たる思いをしたことに比べると、今回は受験ができたこと自体が嬉しく、また、精一杯努力し本試験でも力を出せた感があるので満足感はあります。これで不合格だったら仕方ない、また来年頑張ろうと思えるので今年は受験できて本当によかった。

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